くみた柑のオキラクニッキ

時々オキラク、時々マジメ。基本オキラクだけど、人生ってきっと厳しい。

私が読んだ、認知症に関する本の紹介

認知症の母の介護をしていた時は、あまり本は読めませんでした。
認知症について学ぶ時は、ネットで検索したり、ケアマネさんに聞いていたので、いわゆる「認知症とは」という類の本はこれまで読んだことがありません。

唯一介護をしているときに読んだ小説が『恍惚の人』。

『恍惚の人』有吉佐和子

認知症の介護というものがとてもリアルに描かれています。
母が認知症になるまで、認知症とは、物忘れがちょっと酷くなったようなものだろうと想像していました。しかし現実は全く違いました。
辛い内容だけれど、介護を始める前に読んでおきたい、今も色褪せない作品。

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これはとても個人的な意見なので、あまり参考にしないでほしいのですが、認知症初期の症状が軽い時と、後期の重い時で、心に響く本が変わる気がします。
私は、母の認知症がだいぶ進み、介護の限界がきて施設にお世話になった頃から認知症に関する本を読み始めたので、ああ、これは介護を始めたばかりの頃に読みたかったなぁ、今ではなかったなぁ、と感じた本があります。

それが『ペコロスの母に会いに行く』という漫画。

 『ペコロスの母に会いに行く』岡野 雄一

とても優しく温かい、ほっこりする介護の日常を描いた4コマ漫画。
介護で疲れた心を癒やしてくれます。介護は辛いだけじゃないということを教えてくれます。

では、何をどう頑張ってもしんどい介護フェーズにきたら何を読むか。
認知症とは関係ない、自分が大好きな作品を読んでください。
身体を休めて趣味を楽しんで、自分の精神力を回復することに努めてください。

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認知症の介護をする上で、認知症になった人が感じていること、見えている世界を知ることはとても大切だと思っていて。
なぜそんな行動をするのか、どうしてそんな言葉を言うのか。
その部分がわかっていると、対応や対策がしやすくなります。

『老乱』久坂部 羊

認知症になった舅と、その介護をする長男の嫁、双方の視点から書かれています。
内容は重いですが、認知症を知る上でとてもよい作品だと思います。

 

『全員悪人』村井 理子

認知症になった人の目線で書かれたエッセイ風の小説。
軽い文体なのでとても読みやすいです。

 

『ボクはやっと認知症のことがわかった』長谷川 和夫

認知症介護の経験がある方なら必ず知っているであろう、長谷川式スケールを考案した長谷川和夫先生が出版した本です。
これから認知症と向き合う人には、認知症というものを知る良い本であり、母の介護を終えてから読んだ私は、復習のような答え合わせのような、そんな読後感でした。

note.com

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たまたまツイッタに流れてきて気になったこちらの本は、認知症者からの目線で書かれたお話ということで読みましたが、どちらかというと母の人生と重なる部分がたくさんあって、一人の女性の人生を追体験したような印象でした。
カケイさんという高齢女性の一人称で進んでいく作品。少し知的ボーダーも入っているような印象。

『ミシンと金魚』永井 みみ

 

そして今気になっていて読みたいな、と思っている本がこちら。

『認知症世界の歩き方』筧 裕介 

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最後に少しだけ宣伝。
私が認知症の介護体験をもとにして書いたお話が収録されている短編集です。

『おもちゃの指輪が繋ぐ時』くみた柑

特養のイベントで、家族の交流会が時々あったんですけど、そこでいろいろな方のお話を聞いていると、認知症が進むことをなんとか食い止めようとするために「今日は何月何日?」とか「私が誰だかわかる?」と毎日質問攻めにしていたり、それは認知症特有の症状で御本人の意思とは関係ないよってところに怒りや悲しみをぶつけていたり、傷ついている人がいて。
もしかして認知症者からの目線に気づいてない人って意外と多いのかもしれない、と思ったところが、小説を書こうと思った原点なのです。

母は、認知症初期の頃、自分の行動や言動がおかしいことを自分で理解できる頃が一番辛そうでした。介護をしている方も、今は介護と無縁の方も、知識として持っておいていただけたら、と思います。